書道教室で習える5つの書体
名古屋市、日進市の書道教室『田中書道学院』 広報担当です。
新元号「令和」が毛筆の楷書体で発表されましたね。「万葉集」から採用されたことでも、古典文化が改めて注目されるきっかけになりました。
書道作品や書体のデザインを見ると、芸術的なあまり読めない文字に出くわしませんか?
私たちがよく知る字体のほかに、書道にはどのような書体があるのでしょうか。
今日は、書道教室で習える「書体」についてご紹介します。
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文字の誕生
漢字は、今から3000年ほど前、中国の殷王朝で使われていた甲骨文字に由来しています。もともと文字は伝えたい内容を絵で表したもので、当時は亀の甲羅や牛の骨に書かれていました。絵から転じた文字は他の部族との契約にも使われるようになり、話し言葉より先に伝達の手段として浸透していきました。古代人によって考案された文字が、長い歴史を経て徐々に進化し、最終的に5つの書体が確立されたのです。
1.篆書(てんしょ)
中国の各地で文字が使用されるようになった頃、その形は地域により多種多様でした。そこで秦の始皇帝が、文字統一のため制定したのが「小篆」(しょうてん)と呼ばれるものです。
篆書を身近で確認できるのは、パスポートの表紙で「日本国旅券」の文字です。左右対称のユニークな形が装飾文字にふさわしく、デジタル業界でも活用されています。
最近では「呪術廻戦」のタイトル文字も篆書体をベースに作られています。
2.隷書(れいしょ)
秦の役人が業務の効率を上げるため、篆書を書きやすくしたのが隷書です。左右に波打つような運筆があるのが特徴です。この「波磔」(はたく)と呼ばれるはらいは、毛筆ならではの技巧ですね。
隷書は皆さんのお財布の中に隠れています。「日本銀行券」「壱万円」など紙幣に書かれている文字です。隷書は歴史上の偉人と共にその存在を後世に伝えてきたんですね。2024年には顔ぶれが一新されますが、隷書は上部に残るようです。
3.草書(そうしょ)
草書は、前漢~後漢時代に速記を目的として発達したもので、点画が大きく省略されています。味わいはありますが、読み解きするには専門知識が必要ですね。
文字の文化が伝来し、日本語の発話の「音」に一つ一つ漢字を充てたものが「万葉仮名」です。これを草書で書きくずした「草仮名」から「ひらがな」は生まれました。かな文字の普及により国文学が栄え、日本人の細やかな感覚や感情が描写されるようになりました。
4.行書(ぎょうしょ)
行書は楷書を略した形のように見えますが、実は楷書より古く後漢時代に隷書から派生したものです。一筆書きのような筆記でありながら、読みやすいという長所を持っています。点画をつなげたり離したりするのが自由なので、書き方次第で個性が表現できます。
実際には看板やのれんなど身近なところで見かけている書体です。
中学では書写分野の主な内容として、筆順の逆転や省略法など楷書との違いを学びます。
5.楷書(かいしょ)
楷書は三国時代に完成し、唐の時代に黄金期を迎えました。点画が明瞭で均整がとれており、筆法も習得しやすいことから、正式な書体として最も長く使用されてきました。これまで1800年もの間、標準書体として親しまれてきた楷書は、いかに洗練されたものであるかが分かりますね。
一点一画、筆を離して丁寧に書きます。楷書における起筆・送筆・収筆が、全ての書体の基本になります。書を極めるには、文字の進化とは逆に、楷書が最初に学ぶ書体です。
楷書体の一つとして、フデ五と呼ばれる1949年(昭和24年)から1958年(昭和33年)にかけて発行された五円硬貨があります。
まとめ
以上、書体の歴史を一気に振り返ってみましたが、いかがでしたか。
田中書道学院の大人書道教室では、書体の歴史や文字の成り立ちについても詳しく学ぶことができます。時代背景と照らし合わせ、書道史年表をたどるのも興味深いものです。
大人書道教室のコースはボールペン・筆ペン・小筆・大筆からお選びいただけます。「万葉集」も教材の一つです。原文を書き下した「かな交じり文」は、漢字とひらがなが同時に習えるのでおススメです。
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